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食道癌
食道の病気について
食道は、口から胃への食べ物の通り道で、そのほとんどは胸壁・肋骨にかこまれた部位に存在します。食べ物が通るのは一瞬であるため、その病気の多くは初期には症状が出にくいことが特徴です。
- 食道癌: 症状の主なものは、胸の痛み、食べ物のつっかえ感、熱いものや冷たいものを飲んだ時のしみる感じです。危険因子として喫煙や飲酒(特にアルコール濃度が高い酒類)があげられます。該当する方はかかりつけ医や当院にご相談ください。
- 食道粘膜下腫瘍:その多くは良性であり、悪性に変化することはありません。しかし、非常に大きく、食べ物がつかえる場合には切除の対象となります。
- 逆流性食道炎:主な症状は胸やけ・ゲップ・胸の痛み・夜間の咳などがあります。まずは投薬による治療ですが、それでも改善しない場合には手術適応となります。
- 食道アカラシア:10万~20万人に一人という程度の非常にまれな病気です。食事摂取時につっかえ感を自覚します。投薬治療でも改善がない場合には手術治療となります。主に腹腔鏡での治療となります。
その他にもさまざまな病気があります。外来にてご相談ください。
※図内のA、B、Cをクリックすると、詳しい説明にジャンプします。
A.食道癌の精密検査
1.食道・胃カメラ
食道は口から胃に到達するまでの食物の通り道です。したがって、食道・胃カメラは最も一般的な検査です。当院では、拡大内視鏡検査・超音波内視鏡検査などを用いて微小な食道癌の発見・治療に役立てています。
2.頸部胸部腹部CT検査
食道癌の位置にもよりますが、消化器癌の中で最も多くの範囲に転移を来すことがわかっています。したがって、ほぼ全身が網羅できるCT撮影が必要です。
3.超音波検査
食道癌は肝臓への転移や頸部のリンパ節への転移を来します。CTでは判明しにくい転移を検査するために超音波検査を併用します。
4.骨シンチ・頭部MRI検査
ある程度の大きさをもった食道癌は、骨や脳に転移します。一般的に「遠隔転移」と呼ばれ、手術適応外となるために検査を行っていただく場合があります。
5.採血
食道癌の腫瘍マーカーだけでなく、全身の健康状態を把握するために必須の検査となっています。手術のための特別な検査も含まれるために複数回にわけて行うこともあります。
6.耳鼻科受診
食道癌と同時に見つかる癌の多くに耳鼻科領域のものがあります。それらを発見するために、耳鼻科の診察を受けていただく場合があります。
B.治療の概要
食道癌も他の癌と同様にステージ分類されます。「小さく浅い食道癌」と「それ以外の食道癌」で大きく治療方針が異なります。精密検査を組み合わせ、総合的に判断して治療方針を決定します。以下には当院の治療内容をご紹介します。
①内視鏡治療
胃カメラを用いて行う治療です。主に粘膜内にとどまる「小さな浅い癌」が適応となります。当院では主に内科が治療を担当します。切除した癌の顕微鏡検査を行い、正確な深さを判定することで、リンパ節転移の可能性がある場合には外科的治療が必要となる場合があります。
②外科手術治療
食道癌は位置によっても異なりますが、その多くは胸部のほぼ中央に多くみられます(下図)。その部位によって、術式に細かな違いはありますが、当院では食道癌治療ガイドラインに従い食道亜全摘(癌の切除)と3領域リンパ節郭清を行っています。手術を受けた患者さんは約4週間前後の入院となります。
③術前補助化学療法
CT検査などでリンパ節転移を認めた方が適応となります。これは手術を前提とし、腫瘍を小さくし微小なリンパ節転移をコントロールすることで治癒成績を高める治療方法です。この治療はこれまでの研究で根治性を高める可能性が報告されていますが、一方では抗癌剤に耐性の場合は病変や転移が広がってしまう可能性があります。したがって当院ではベースに白金製剤(シスプラチン)とフッ化ピリミジン系薬剤(5-Fu)を用い、さらにタキサン系薬剤(ドセタキセル)を加える治療を行っております。多くの場合は2~3カ月かけて2クールの治療を行い、転移リンパ節が縮小・消失した時点で手術を行っています。点滴化学療法は入院で行います。
④化学療法(放射線化学療法)・食道内ステント留置
主に、肝臓や肺、リンパ節などに転移があり、手術治療ではとりきれないと判断した方が適応となります。化学療法のみの場合と放射線を組み合わせて行う場合があります。主な使用薬剤は「術前補助化学療法」で説明した薬剤が中心となります。 その他に、全身状態などで薬剤治療なども困難な方は食事摂取が出来るように内視鏡を用いて食道の通り道を作るステント挿入も行っています。
手術治療を受けた患者さんを対象に、栄養士からの食事摂取指導や退院後の注意点などの指示を受けていただきます。退院後の初めの外来は2週間から1カ月程度を原則として受診していただきます。
C.術後の外来通院について
退院後は、切除した食道癌に対して病理学的検討をした上で、細胞レベルでの転移があった場合には充分に経過観察を行い、場合によっては化学療法を導入していきます。そのスケジュールは患者さん個人によって異なります。外来主治医とご相談ください。
外科手術治療について
食道は、食物を胃まで運ぶ役割をしており、肋骨に囲まれた胸部の最も深い場所に位置しています。また、食道癌は血管やリンパ管を通して様々な領域に転移をきたすことが知られており、主に頸部・胸部(縦隔)・上腹部へのリンパ節転移がおこります。したがって手術適応と判断した場合はそれらすべての領域のリンパ節の切除が必要となり手術による体への侵襲も大きくなります。そのために患者さんの持っている体力や健康状態は個々で異なるために、当院では主に2種類の治療方法を用いています。
1.食道亜全摘出術(胸部食道全摘出術)+3領域リンパ節郭清術
全身状態が比較的良好である方が対象となります。高齢でもこの治療は可能ですので主治医にご相談ください。この手術は頸部・胸部・腹部の3か所からアプローチします。つまり食道切除をする胸部操作、食道の代用臓器作成のための腹部操作、代用臓器と頸部の食道をつなぎ合わせる頸部操作が必要となります(下図参照)。また、同時にすべてのリンパ節郭清を行い、それらは3領域にまたがるために、通称3領域リンパ節郭清といいます。これらの部位は食道癌の転移がみられる領域で根治には必須となっています。食道を切除した後は、食物が通るように再建し、その方法の多くは胃を細長くし当院では胸骨後経路で頸部まで伸ばして食道の代用とします。食事摂取までには時間がかかる場合にあるので、その間の栄養方法として腹部に小さな(親指大)の腸ろう(腸に直接栄養剤を注入する方法)を造設します。

- A:頸部操作:つなぎあわせる+リンパ節郭清
- B:胸部操作:食道切除+リンパ節
術中写真(苦手な方はご注意ください) - C:腹部操作:食道代用臓器作成+リンパ節郭清
胃を使った食道代用臓器作成
(苦手な方はご注意ください)
2.食道抜去術
手術は可能だが、心臓や肺の機能が悪いなど、体への大きな侵襲が困難な患者さんに対する治療となります。つまり最も大きなダメージとなる胸部への侵襲をなくし、腹部と頸部からの操作で手術をします(図)。上記のような一般的な術式に比べて、肺や心臓への影響も最小限にします。しかし、癌の根治性は上記の術式に比べると、低くなります。腸ろうは、ほぼ全例の患者さんに造設します。

- A:頸部操作:つなぎあわせる
- B:腹部操作:主に胃を使った食道代用臓器作成
手術合併症
手術には様々な合併症があります。合併症とは、術後経過の中で「入院期間が長くなり、なんらかの追加処置が必要となる事象」を指します。しかし、すべての患者さんに起こることではなく、近年その治療方法はこれまでの長い食道癌手術の歴史の中で経験をもとに充分に対応可能となってきています。以下に主に食道癌で報告されている合併症の一部を抜粋します。
- 術後出血:主に胸部からの出血が問題となります。止血操作をして手術を終了しても、しばらく後に再度出血することをいいます。多くの場合は24時間以内に認められ、ほとんどの場合は経過観察で止血されますが、輸血が必要となる場合があります。
- 肺炎:胸部手術で肺周囲の操作を行います。そのために、術後は痰が出やすくなり、排痰がうまくいかないと肺炎を起こす場合があります。術前より呼吸リハビリテーションを受けていただき、それは術後にも継続されます。
- 縫合不全:食道の代用とした臓器(主に胃)と頸部の食道とつなぎあわせた場所がうまくくっつかない現象をいいます。適切な処置を行うことで多くの場合は自然に修復されます。
- 反回神経麻痺:声を出す神経周囲を操作しますので、術後に声がかれる、食事を誤嚥しやすくなるなどの症状が出ることがあります。麻痺がある場合には食事は時間をかけて摂取していただき、リハビリテーションをすることで多くの場合は自然に回復します。














